第1回

戸田 達史先生
医師 / 神戸大学医学部教授

戸田先生は日々、福山型筋ジストロフィーのメカニズムの解明と、治療薬の研究をしてくださっています。この研究に携わる事になった経緯や、治療薬の最前線についてお話を伺いました。

まずは福山型筋ジストロフィーについてご説明ください。
福山型筋ジストロフィーは先天性の病気で、首の据わりも 遅い事で気づかれる親御さんが多いです。
筋肉細胞がつくられてもどんどん破壊されていく病気で、 ほとんどの方が歩行を獲得する事ができません。
デュシェンヌ型など様々な筋ジストロフィーが存在する中で、進行も早く最も重症なタイプです。
遺伝性の病気で両親共に保因者の場合、劣性遺伝で発症します。
アジアの国々に患者は分布していますが、ほとんどの患者さんは日本人です。
先生が福山型筋ジストロフィーの研究、創薬に携わる事になったきっかけを教えてください。
また、研究中の印象に残った事などはなんでしょうか?
東大の神経内科にいた頃、診療でいくつもの病院に赴任しました。
1989年、千葉の筋ジス病院に赴任した時の事です。デュシャンヌ型筋ジストロフィーの病態がちょうど解明されました。
その頃、福山型筋ジストロフィーは遺伝性の病気であること以外原因について、わかっていませんでした。
この日本特有の病気を日本人の力で解明したい、と思った のがきっかけです。
研究初期は研究予算もつかないので、自費で全国をまわり採血をする日々。
そして、パソコンがまだ発達していない時代、フクチンという物質の配列を読み取る為の組合せを、手打ちで毎日入力し続けるという気の遠くなるような作業の日々が数年続きました。
そして1993年に染色体9番に異常がある事が判明、1998年には遺伝子本体の異常を特定する事ができました。
大変でしたが、「100の失敗で1の成功を得るために泥臭く」というスタンスで歩みました。
今創薬の進んでいる薬はどういったものなのでしょうか?
また、薬の効果としてどうような効果が期待されますか?
2011年に福山型筋ジストロフィーの異常を引き起こす仕組みが解明すると共に、治療法に繋がる特殊な物質を用いたマウス実験で成功しました。特殊な物質とはアンチセンス核酸といいます。アンチセンス核酸を注射する事によって、遺伝子上での異常なフクチンタンパク質の切り取りを防ぎ、正常な状態に戻すことが動物実験では現在、成功しています。まだ、人間での臨床までは進んでいませんが、患者に投与する事で筋肉細胞の破壊を防ぎ、正常な筋肉が作られることが期待されています。
その薬は現在の医学界にとって次世代薬と言われる画期的 なものだとお聞きしました。
従来の薬とはどのような点が違うのでしょうか?
核酸薬は遺伝子そのものをターゲットにして治療していく薬になります。
核酸薬が成功する事で、例えば「がん」「エボラなどのウィルス治療」などの治療が期待されています。
いってみれば遺伝子の切り取り異常により発症する病は、核酸によって治療が可能になる事がある訳です。
また、応用が可能になれば安価で患者さんの元にお薬が届く事になります。
ふくやまっこ達へ、メッセージを お願いいたします。
お兄さん(おじさんなんだけど・・笑)もがんばっている から、待っててね!!

戸田 達史とだ たつし
医師 / 神戸大学医学部教授

1985年東京大学医学部医学科卒、内科研修後、1987年東京大学医学部神経内科・医員、1994年東京大学医学系研究科人類遺伝学・助手、1996年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター・助教授を経て2000年より大阪大学大学院医学系研究科遺伝医学講座(臨床遺伝学)教授。2009年より神戸大学大学院医学研究科 神経内科/分子脳科学 教授。2002年-2008年CREST研究代表者。専門はゲノム医科学、遺伝医学、神経内科学。主な著書に「ゲノム医学の新しい展開」など。日本人類遺伝学会・学会賞、長寿科学振興財団・財団会長賞、日本神経学会・学会賞、朝日賞、文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)受賞。

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